人が生きていく上で欠かせない「水」。けれど、その水が不足してしまったら、私たちのカラダにどんな変化が起こるのでしょうか。
生命維持のために大切な水分の循環
私たちは、水分の摂取と排泄を繰り返す、循環を通して生命を保っています。
身体の中を循環している水分は、単なる水ではありません。ナトリウムやカリウムなど健康を維持するために必要な成分が多く含まれています。汗・尿・便で排出した成分は、食事・飲料から新たに吸収することで、身体のバランスを保っているのです。
水分が足りないとカラダの機能もストップする
水分が不足することで起こる脱水症。これは、暑い環境で大量の汗をかいたり、嘔吐や下痢などが続くことで発症します。日頃、よく耳にする脱水の危険をしっかり知っておきましょう。
栄養素や酸素が運べない!
大量の発汗や、嘔吐や下痢など水分の排出が続くと、血液が濃くなって血管が詰まりやすくなります。栄養素や酸素を必要な場所にスムーズに運べないため、体力低下の原因になってしまいます。
体温が調節できなくなる
血液が不足すると体温の調節機能も失われます。血液は、カラダを巡ることで、内部で作られる熱を体表へ運び発散させているのです。脱水が進むと、この役割も奪われてしまいます。
老廃物が排泄できない!
カラダの潤滑油である血液は、老廃物も運んでいます。しかし、その循環がうまくいかないと老廃物の排泄もストップ。さらに危険な状態に近づいてしまうのです。
脱水症には、カラダが欲しがる「水分」を
ただ水を補給するだけでは脱水症は治せない!
水とともに電解質等が奪われる脱水症には、水だけでなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質をバランスよく補給することが大切。
弱ったカラダが吸収しやすい「理想の水分」を補給して、脱水症には、右の図にあるような電解質等を補給するようにしましょう。
体液に近い「理想の水分」。ポイントは電解質濃度
電解質とは、塩素・ナトリウム・カリウムなど、身体の働きに欠かせない成分のことです。
人の一日に、必要な水分量とは?
カラダに大切なのは、水の出入りのバランスが釣り合っていること。私たちは平均して、食事から約1L、飲み物からは約1.2Lの水分を摂取し、体内でエネルギーを作る際に生じる0.3Lの水分を合わせ計2.5Lの水分を吸収しています。
反対に、尿で1.5L、便で0.1L、そして呼気や皮膚から0.9Lの水分が体外に出てゆき、その量も同じく2.5L。人体は実にうまくバランスをとっているのです。
水だけでなく電解質も奪われる、脱水
私たちがよく耳にする脱水症とは、水だけでなく塩分も奪われる状態。図のように、汗からは水だけではなく、身体の電解質も奪われます。
また、特に嘔吐や下痢・発熱時は、より多くの電解質が失われることを覚えておいてください。
※1 山口規容子;小児科診療,1994;57(4):788-792
※2 楊井理恵,他:川崎医療福祉学会誌,2003;13(1):103-109
※ORS:経口補水液
監修:新古賀病院 教育研修本部 部長 靍知光先生